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多数説および判例は,この記載は手形上の効力を生ぜず,手形授受の当事者間で民法上の効力が認められるに過ぎず(最判昭39.4.7民集18.4.520),それ以外の手形取得者は裏書人にも,記載した振出人にも損害金を請求できないとしている(大判大14.5.20民集4.264)。
しかし有力学説は,この文句を記載した振出人は手形のすべての所持人に対し責任を負うべきであるとする。
また,Aについて,判例は,受取人のほかその後の手形取得者との間でもそこに記載の裁判所が管轄裁判所となると解している(大判大11.6.21民集1.337)。
(b)無益的記載事項手形上に記載する必要がないのみならず,記載しても効力が認められない事項である。
それには,@統一手形用紙に印刷してある「指図文句」や「受戻文句」などのように,法律上の規定の繰返しにすぎない無意味な記載や,A確定日払,日付後定期払の手形における利息文句や一覧払,一覧後定期払の手形における利率の表示のない利息文句のように無効な記載などがある。
(c)有害的記載事項それを記載することによって,手形全体が無効となる記載事項である。
したがって,記載してはならない事項である。
たとえば,分割払の記載(手77条1項2号=33条2項)や「商品受領の上支払う」というような条件付支払約束文句などがこれにあたる。
手形要件を欠く手形は不完全な手形であって,原則として無効である(手76条1項参照)。
しかし,同じく手形要件が全部そろっていないのに,後日その空白部分を補充することが予定されているときは,それは未完成な手形として,不完全な手形とは区別される。
このように,白地手形とは,署名者が後日他人(手形所持人)に空白部分を埋めさせること(補充させること)を予定して,手形要件の全部又は一部を記載しないで流通においた証券をいう。
白地手形は,たとえば,手形割引による金融を受けるのに割引先が決まらないとか,割引先が裏書せずに手形を他に譲渡できる便宜のために,受取人を白地にしたり,長期間の手形サイト(振出日から満期までの期間)を隠すために振出日を白地にしたり,当座貸越契約や雇用契約などによって将来発生するかもしれない債務を担保するために金額や満期を白地にしたりして(根担保手形),振り出されることが実際に多い。
このような実務上の要請から,白地手形は商慣習法上手形と同様の効力が認められており(大判大10.10.1民録27.1686,大判昭7.5.30民集11.1041),手形法も白地手形を承認することを前提として,白地補充に関する規定を設けている(手77条2項=10条)。
(b)白地手形上の権利白地手形は,@白地部分の補充を停止条件とする条件付きの手形的権利と,Aこの条件を成就させる権利,つまり補充権の2つを表章する有価証券であると解されている。
(a)白地手形行為者の署名白地手形であるためには,少なくとも1人の手形行為者の署名が必要である。
振出人が署名をして白地手形を振り出す(白地振出)のが一般的である。
他に裏書人だけがまず署名したり(白地裏書),手形保証人だけがまず署名して(白地保証)白地手形を発行する場合がある(為替手形には白地引受がある)。
(b)手形要件の全部または一部の欠訣白地手形であるためには,手形要件の全部又は一部が空白であることを要する。
もっとも,統一手形用紙を使用するかぎり,手形要件がいくつか印刷されているので,白地にできる要件は,受取人・金額・満期・振出日・振出地だけである。
(c)補充権の授与白地手形であるためには,手形署名者(作成者)が後日手形所持人に白地を補充させる意思があったかどうか,言い換えれば,補充権の授与があったかどうかによって区別される。
補充権の授与は,明示的または黙示的になされなければならない。
(d)白地手形の交付白地手形であるためには,以上のような証券を交付しなければならない。
これによって,白地手形という‘慣習法上の有価証券が成立する。
(a)主観説と客観説白地手形と不完全な無効手形とは補充権が存在するかどうかで区別されるが,その補充権の存否は何を基準に決めるかについては,署名者の具体的な意思を基準とする主観説と,手形の外観だけを基準とする客観説との対立がある。
主観説は,補充権は白地手形の作成者(白地署名者)によって相手方に与えられるとする。
つまり,白地署名者が補充権を与える意思を具体的に持っていたか否かによって,白地手形であるか否かを決めるものである。
これに対し,客観説は,署名者の具体的意思を考慮しないで,手形の外観上補充が予定されていれば足りるとする。
つまり,補充権の存否を客観的に認定しようとするものである。
主観説では,白地署名者の意思が外部からはわからないという難点がある。
また,たとえば,手形割引による金融の可能性を探るために要件白地の手形を交付するが,その補充を白地署名者自身が行うものとしていた場合に,他人によって勝手に白地が補充されても,署名者は補充権を与えていないのだから,善意でこの手形を取得した者に対しても,手形上の責任を負わなくてよいことになる。
しかし,これは手形取引の安全上問題である。
判例は一貫して手形責任を認めている(大判大15.12.16民集5.841,最判昭31.7.20民集10.8.1022)。
そこで学説は,権利外観理論により,白地署名者が手形用紙に署名するとか,自分で他人に手渡すなどして,いかにも補充権を与えた手形であるかのような外観を作り出し,この手形を善意の第三者が重過失なしに取得した場合,第三者の信頼を保護し白地署名者は責任を負うべきであるとする。
これに対し,客観説では,手形用紙として印刷された書面に署名されておれば,署名者に補充権を与える意思がなくても白地手形とされる。
しかし,手形文句や支払約束文句の書いていない単なる白紙に署名をした場合には,署名者が他人に補充権を与えていても白地手形になり得ないかについては議論がある。
(b)折衷説基本的には主観説に立ちながら客観説を取り入れた折衷説が,近時有力になってきている。
それは,書面の外形上欠けている要件が将来補充を予定されていると認められる場合には,そのような書面であると認識し,または認識すべくして署名した以上,補充権が与えられたものと解され白地手形が成立するとする。
手形用紙を利用した場合,署名者の補充権授与の意思の有無を問題にせず白地手形と見るが,単なる白紙に署名された場合には,署名者が将来手形にする具体的意思を有していたならば,白地手形とみる。
この折衷説の立場によったと思われる近時の最高裁判例もある(前掲最判昭31.7.20,最判昭46.11.16民集25.8.1173)。
(a)白地手形の流通白地手形は,商慣習法によって,完成手形と同じように裏書(手77条1項1号=11条以下)によって譲渡することができる。
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